キラキラするグロスの唇が、かすれ声を紡ぎ出す。
「今夜は、ハロウィンですから。だから……Trick or Treat? お菓子をくれなきゃイタズラします」
「え? あの、きみ……」
「お菓子もイタズラも同じく、こうするだけですけど」
秋色グラデーションのまぶたが少しだけ開かれた。
ヒールでますます背の高い彼が体をかがめる。
顔が近付いた。
パウダーの匂いが甘い。
唇が触れ合う寸前、彼は再び目を閉じた。
キスは短かった。
わたしはうっかり、目を閉じそこねた。
「行ってきます。写真も撮っておきます。あなたにまた会ってもらうためにね」
計算高そうなことを早口で言って、彼は玄関から飛び出した。



