「行ってらっしゃい」
「はい」
口数の少ないまま出ていく彼を見送って、一人になったわたしは自分の唇に触れてみる。
うっすらと伸びたリップグロス。
困ったことに、胸のドキドキが引かない。たかがキスひとつで。
自分がこんなに彼に夢中だとは、気付いてなかった。
突然。
玄関の呼び鈴が鳴らされた。
のぞき穴から外をうかがえば、見送ったばかりの彼がいる。
わたしはドアを開けた。
「忘れ物でもあった?」
彼はかぶりを振った。
玄関に入ってきて、後ろ手にドアを閉める。
キレイな形の手がわたしの両肩をつかんだ。
ドキリと心臓が跳ねる。
「ねえ、どうしたの?」
驚きのままに彼を見上げると、彼はキュッとまぶたを閉じた。
まつげの長さに、目を奪われてしまう。



