「………黙ってたのは、ごめん。

言わなきゃいけないのは分かってんだけど………」



言い訳なんか、聞きたくない。

トラが言い訳を言う姿なんか見たくない。

それに、トラが私に言い訳をする筋合いもない。


私はトラの言葉を遮るように、笑顔をつくって目をあげた。




「あはは、なに言ってんの、トラったら。

べつに謝ることないって!

もう、変なところで真面目なんだから」



「うさ………」



「だって、私たち、ただのルームメイトでしょ?

一緒に住んでるからってプライベートなこと全部教え合わなきゃいけないわけじゃないんだし」



「………」



「あ、もうこんな時間だよ。

そろそろご飯つくらなきゃね。

明日も仕事だし!」



私は精いっぱい明るく言って、キッチンで晩ごはんの支度を始めた。


トラは何か言いたそうにしていたけど、私の態度から聞くつもりのないことを悟ったのか、何も言ってはこなかった。



それから私たちはいつものように一緒に食事をして、交代でお風呂に入って、並んで歯磨きをして、それぞれの寝室に入って眠りについた。