おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「こら、うさ。傘わすれてるって」

「わ、危ない危ない」

「しっかりしろよなー、社会人」


トラが呆れたように笑って、私に傘を差し出してくる。


「ごめんごめん」


私は手を合わせて受け取った。


改札を出て、家の方向へと歩き出す。

このあたりはベッドタウンなので、駅から少し離れると、途端に暗く静かになった。


「あー、やっぱ飲み足りねえなあ」


トラが大きく伸びをしながら言うので、私も真似して伸び上がりながら答える。


「同感! コンビニ寄っちゃう?」

「寄っちゃうか!」

「寄っちゃお、寄っちゃお!」

「明日休みだしなー」

「休み! テンションあがる!」

「よーし、今日は飲むぞー!」

「飲むぞー!」


私が夜空に向かって拳を突き上げると、トラも同じように叫んだ。


近くのコンビニに入って、缶ビールの6本セットをカゴに入れる。


「うさ、つまみどうする?」

「んー、軽いのがいいなあ」

「だな。スナック菓子でも買っとく?」

「いいねー、深夜のジャンクフード!」

「身体に悪いって分かってんだけどな」

「悪いことしてる感がたまらないよね」

「背徳感と幸福感って紙一重だよな」

「あはは、トラったらカッコつけちゃって!」