おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

共用廊下を歩いてくる背の高い人影を見て、


「トラ!」

「悟さん!」


私と五十鈴さんは同時に声をあげる。


トラは弾かれたように顔をあげて私たちの姿を見た。


その途端、大きく目を見開いて、


「え………あ、ええっ?」


珍しく、かなり動揺している。


「………ど、どういう状況だ、これ………」


戸惑ったように私と五十鈴さんを交互に見ながら、トラはやけに遅い足取りで近づいてきた。


「悟さん! お待ちしておりましたわ!」


硬直している私の横を通り抜け、五十鈴さんは軽やかにトラのもとへと駆けつける。

そして、そのままの勢いで抱きついた。


「わっ! ちょっと、いきなり………」


トラは慌てた様子で身体を離す。

でも、それに構わずに五十鈴さんはにこやかに微笑んだ。


「お久しぶりですわね、ご無沙汰しておりました」


「あ、ああ………そうだね。

それにしても五十鈴、どうしてここが………」


トラの言葉を聞いて、私の胸はちりりとする。


トラは当たり前のように『五十鈴』と呼んでいる。

やっぱり、トラと五十鈴さんは………。



―――なによ、それ。

私、お邪魔虫ってやつ?


私はすばやく踵を返した。

とりあえず、ここにはいられない。

というか、いたくない。


トラが降りたばかりのエレベーターに乗ろうと開ボタンを押した瞬間。


「あっ、おい、うさ!」


トラに呼ばれた。