おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「あらっ、そうでしたの!

それは失礼いたしました」



五十鈴さんはにこにこしながら深々と頭を下げて、こう言った。



「いつもうちの日比野がお世話になっております」



その言葉に、思わず「はっ?」と叫びそうになって、私はの慌てて口許を押さえる。



………『うちの日比野がお世話に』?


なによ、その言い方。


え? そういう感じなの?

この人とトラって、そういう感じなの?



なぜだか分からないけど、とにかく私は動揺していた。

何も言えないし、動くこともできないくらいに。


いきなり現れた女の子に、『日比野がお世話になっております』などと言われて、頭が真っ白になるくらいの衝撃を受けていた。


事態が飲み込めない。

どうしよう………どうすればいい?



混乱している私に、五十鈴さんは追い討ちをかけるように言う。



「それで、今日はどのようなご用件で?

お仕事のお話ですかしら。それとも、忘れ物などを届けてくださいましたの?」


「ええと………あー」


「まあまあ、わざわざどうもありがとうございます。

よろしければお預かりしておきますけれど」



丁寧ながら有無を言わせぬ口調。

私は完全に呑まれてしまい、言葉も出ない。



そのとき、エレベーターのドアが開く音がして、私も五十鈴さんは同時に振り向いた。