おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「しゃあねえだろうが。お前が二次会いくなら俺も行こうと思ってたしな。ってか、みんなの前で普段通りの感じで『うさ』なんて呼んだ日にゃ、大騒ぎだろ?」

「そりゃそうよね〜。なんてったって日比野くんは、『ラララ不動産の王子様』だもんね」


にんまりと笑って隣を見上げると、トラが嫌そうに顔をしかめた。


「うさ………お前、絶対バカにしてんだろ」

「してないもーん♪」


トラは「もーん♪ じゃねえ!」と私の頭を小突くふりをした。


でも、トラが王子様と呼ばれているのは本当のことだ。

容姿端麗で、営業成績は断トツ、しかも人当たりまでいいときたら、女の子が放っておくわけがない。


まあ、実のところ、中身はこんな感じなんだけどね。


「トラってほーんと外面いいよね。本当はこんなにガサツなのにさ。会社だと超好青年だし」

「それはうさも同じだろ」


トラが私の鼻をきゅっとつまんできた。

でも、ぜんぜん痛くはない。


「ふふ、まあね。社会人の世渡り術ってやつよ」

「だよなー。本心まる出しにしてたら、ぜったい人間関係悪くなるもんな」

「そうそう」


そんな話をしているうちに、いつの間にか降りる駅に着いていた。


「お、やべ。降りるぞ!」

「はーい」