「どうやってそんなに急成長できたの?」

「まあ、色々理由はあるんだろうけど、大きいのはあれだな、都心の大型マンションと、あとは土地と建物のセット販売だな」


土地が慢性的に不足している都心に超高層マンションを建設して、多少値が張っても持ち家に家族でゆったり住みたい、という顧客のニーズに応える。

一方、土地が余っている地域では、農業放棄地などを買い上げて、自社の建築部門が住宅を建設し、土地と家をセットで売る。


「そうすれば、土地の売買契約と建物の建設が一本化できて客にとっても手間が減るし、会社側も土地分と建物分の仲介手数料が得られるだろ?」

「なるほどねえ、ローンも土地と家がまとめて組めちゃうわけか」

「そういうこと。そういうセット販売は、今となっては時々やってる会社を見かけるけど、最初にやりだしたのはABC不動産だな」

「へえー、そうなんだ。それ、さっきの新聞に載ってたの?」

「ん? いや、今しゃべったのはもともと知ってたこと。記事になってたのは、社員の意識改革の話だったよ」

「そうなの? トラったら、よく知ってるね。さすがエリート!」


からかうように言ってやると、トラはばつが悪そうに顔をしかめた。


「たまたま知ってただけだよ」


トラはそう謙遜するけど、普通に生活していたら、『たまたま』そんなことを知る機会なんてない。

やっぱり、どこかで勉強したんだろう。