「―――トラには幸せになってもらいたいよ、ほんと」



仕事を終えて帰宅して、いつものように二人でまったりしながら、私はしみじみと呟いた。


だって、こんな完璧な王子様みたいな人、なかなかいない。

トラが幸せになれなかったらおかしいもんね。



缶ビールを飲みながら本来を読んでいたトラが、私の唐突な呟きに顔をあげる。



「なんだよ、急に」


「べつにー、思ったから言っただけ」


「ふうん?」



私はトラの手からビールの缶を奪い取り、ぐびぐびっと飲み干す。


トラはやっぱり怪訝そうな顔をしていたけど、小さく笑ってからこう言った。



「ま、なんかよく分かんないけど、どうも。俺もうさには幸せになってもらいたいと思ってるよ」




その言葉を耳にして、私は未来へと思いを馳せる。



私たちは、例えば一年後、三年後、十年後、どんな生活を送っているのだろうか。


お互い、幸せになっていればいいけど。



でも、正直、別々の場所でそれぞれに幸せになっている私とトラを想像するのは難しかった。


未来はいつだって遠くて、ぼんやりしていて、今の私には何も見えないのだ。