「…………」
「…………」
「―――ぷっ」
二人同時に、噴き出してしまった。
「あはは! もうだめ、我慢できない!」
私はお腹を抱えて叫ぶ。
「俺も、もう無理だ! おかしすぎ………っ」
日比野悟も両手で顔を覆っている。
私たちは笑いすぎてよろめきながら、もつれこむようにして電車に乗り込んだ。
示し合わせたように周囲にさっと視線を走らせて、
「誰もいない、な」
「うん。いない」
と頷き合う。
私たちは並んでつり革をつかんだ。
「あー、危なかった」
「本当だよ。うさのバカ笑い、誰かに見られてたら絶対怪しまれたぞ」
「なによー、トラのせいでしょ」
「は? なんでだよ」
「だって………『宇佐美さん』って!」
ついさっき、吉岡さんと一緒にいる私に声をかけてきたときの日比野悟―――トラの声音を真似て、私は「宇佐美さん」と繰り返した。
だめだ、どうしてもにやけてしまう。
「お前こそ!
『日比野くん、どうしたの?』とか、マジうけたぞ」
「いやいや、トラだって!
あんな澄ました顔とよそ行きの声で、『宇佐美さん、二次会いく?』とか!
私、笑い堪えるのに必死だったんだからね」
「…………」
「―――ぷっ」
二人同時に、噴き出してしまった。
「あはは! もうだめ、我慢できない!」
私はお腹を抱えて叫ぶ。
「俺も、もう無理だ! おかしすぎ………っ」
日比野悟も両手で顔を覆っている。
私たちは笑いすぎてよろめきながら、もつれこむようにして電車に乗り込んだ。
示し合わせたように周囲にさっと視線を走らせて、
「誰もいない、な」
「うん。いない」
と頷き合う。
私たちは並んでつり革をつかんだ。
「あー、危なかった」
「本当だよ。うさのバカ笑い、誰かに見られてたら絶対怪しまれたぞ」
「なによー、トラのせいでしょ」
「は? なんでだよ」
「だって………『宇佐美さん』って!」
ついさっき、吉岡さんと一緒にいる私に声をかけてきたときの日比野悟―――トラの声音を真似て、私は「宇佐美さん」と繰り返した。
だめだ、どうしてもにやけてしまう。
「お前こそ!
『日比野くん、どうしたの?』とか、マジうけたぞ」
「いやいや、トラだって!
あんな澄ました顔とよそ行きの声で、『宇佐美さん、二次会いく?』とか!
私、笑い堪えるのに必死だったんだからね」



