おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「私もちょっとよく分かんないな………。

あ、もしかして、二次会の人数確かめたかったんじゃない?」



苦し紛れにそんな出任せを言ってみると、吉岡さんはさらに訝しげな顔になった。



「じゃあ、どうして私には訊かないのよ」



「さあねえ。吉岡さんは確かめなくても行くだろうと思ってるんじゃない?」



「ええー? そりゃ行くけどさあ。

でも訊いてほしかった!

せっかく日比野くんと至近距離で喋れる貴重なチャンスだったのに」



私はあははと笑って、



「じゃ、電車の時間あるから、帰るね」



と吉岡さんに手を振った。



他の社員たちにも「お先でーす」と声をかけて、駅に向かう。




ホームで電車を待っていると。



「よっ」



斜め後ろから声をかけられた。


振り向くと、軽く右手をあげた男―――日比野悟が微笑んで私を見ている。



私も「よっ」と返して、前に向き直る。



日比野悟は私の隣に立って、電車が来る方向を見つめた。



「あと何分?」と訊ねてくるので、



「もうすぐ来るんじゃない?」と腕時計に目を落として答える。



「そか。おま……宇佐美さん、けっこう飲んだ?」


「うーん、あんまり。ト……日比野くんは?」


「まあまあかな。ちょっと飲み足りないってくらい」


「ふうん………」