「いやー、日比野くんのコーヒーのおかげだわ」

「あはは、そうなんですか?」

「なんかすごく元気出たもん」

「たしかにそうですね」


私は空になったコーヒー缶をこつこつと鳴らす。

赤木さんは肩を回しながら立ち上がった。


「さあ、帰ろう。早く帰って寝ないと、明日がつらいわよ」

「はい」

「あー、今から帰ってご飯つくるのはしんどいな。お弁当買って帰ろうかな」

「ですよねー」


相づちをうちながらスマホを取り出す。


案の定、トラからラインが届いていた。


『うさ、おつかれ。ご飯は用意してあるから、早く帰ってこいよ』


思わずにんまりしてしまう。

それに気がついたのか、赤木さんが意味深な表情で私を見つめてきた。


「ちょっとお、宇佐美さん。なになに? 嬉しそうな顔しちゃって。彼氏からメールでも来てた?」

「あ、いえ、ちがいますよ。ってか彼氏いないって知ってるじゃないですか」

「ふうん? まあ、いいけどね。さあ、帰ろうか」


カバンを肩にかけてすたすたと歩き出した赤木さんの後を、私は慌てて追いかけた。