おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

そして、言葉を呑んだ私に、トラが言ったのだ。


『宇佐美さん、良かったらここに住まない? 部屋、余ってるからさ。ほら、流行りのルームシェアってやつ』


さすがの私も、『いや、それはさすがに』と最初は断った。

でも、正直なところ、めちゃくちゃありがたい申し出だったわけで。


『じゃあ、1ヶ月! 次の部屋が見つかるまで、お世話になってもよろしいでしょうか?』

『もちろん。3LDKのマンションで独り暮らしって、妙に虚しかったんだよな。宇佐美さんが住んでくれたら嬉しいよ』

『家賃はいくら払えばいい? ここってやっぱ20万近くするんでしょ? 半分だといくら?』

『いいよ、金はいらない。ホームレスから金なんか取れないよ』

『ええっ、そんなの申し訳ないから無理! 払わせて、絶対!』

『うーん……じゃあ、3万でいいよ』

『安っ!』

『餞別だと思って受け入れてよ』


なんの餞別だ、と思ったけど、トラはそれきり聞く耳を持たなくなってしまった。


というわけで、私はたったの月3万で、こんな高級マンションに暮らし始めたのだった。


しかも、1ヶ月だけのつもりが、あまりの居心地のよさに、思わず住み着いてしまって。

気がついたら、もう半年が経ってしまっている。