おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

『身体冷えてるだろうし、酒でも飲む?』


マンションの部屋に着くと、トラはそう言ってワインのボトルを出してきて、小鍋に赤ワインを注いでとろ火で温めて、ホットワインを作ってくれた。


恋人の突然の心変わりと、手酷い捨てられ方に傷ついていた私は、

たいして仲良くもない同期の私に親切にしてくれるトラの、恩着せがましくない態度と優しさに、泣きそうになった。


そのせいか、暖かいワインを飲みながら、私は泣きわめきながらその日の一部始終をトラに報告した。


さんざん愚痴って少し落ち着いてから、私はふと気がついてトラに訊ねた。


『そういえば、このマンションすごいね。駅近いし、内装も外装も豪華だし、それに、3LDK?』


二十代半ばの独身男の住まいにしては、ずいぶんと贅沢だ。

ってことは………。


『日比野くん、もしかして、独り暮らしじゃない? 誰かと一緒に住んでるとか?』


我ながら野暮だとは思うけど、酔っぱらっていたせいもあって、不躾にも訊いてしまった。


するとトラは、眉を少し下げて困ったような顔をして、答えた。


『あー………実は、さ。彼女と一緒に住む予定で契約したんだけど、結局フラれちゃって』


仕事ができて顔がよくてスタイルもよくて、しかも性格までいい王子様のような男が、まさか、平凡な私と同じように恋人からフラれることがあるなんて。

私は驚いてしまった。