おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

よりにもよってこんな姿を同僚に見られてしまうなんて、と私は青くなったんだけど、

彼―――トラは、私の奇妙な出で立ちを気にしたふうもなく、からかうでも笑うでも同情するでもなく、

平然とした顔で、

『宇佐美さん、こんなとこで何してんの?』

と訊いてきた。


私はなんとか笑みを浮かべて、

『諸事情によって、ついさっきホームレスになっちゃって』

とふざけた感じで返した。


『ふうん、そりゃ災難だったな』


トラはけろりとした顔で言い、いきなり私の旅行鞄を手にとった。


『まあ、こんな所にいたら危ないし、とりあえずウチ来たら?』


なんでもないことのように言われて、私は何も考えずに『ありがとう、助かる!』と頷いた。


いま思えば、社交辞令だったかも知れないのに、驚くべき図々しさでトラの言葉に甘えてしまったものだ。

それに、いくら同僚とはいえ、よく知りもしない男の家にほいほいついていくなんて、さすがに危機感が足りないことこの上ない。


でも、夜の寒さと家なしの心細さに震えていたそのときの私にとっては、とにかくトラの申し出がありがたくて、

そしてトラの反応があまりにも普通で、


私は遠慮だとか警戒だとかというものを、すっかり忘れていたのだ。