キッチンの床にしゃがみこんで、私はぼろぼろと涙を流す。



ドアを開けたままなので、冷蔵庫がビーッ、ビーッと警告音をならした。


うつむいたまま片手でドアを閉める。



私の誕生日は、一週間後。


でも、トラには教えたことがない。


トラのやつ、いつの間に私の誕生日なんか知ったんだろう。



泣きながら記憶をたどっているうちに、何ヵ月も前に、トラとテレビを見ながら、『この歌手、私と誕生日おなじなんだよね』という会話をしたことがあったのを思い出した。


トラはたぶん、それをきっかけにして、私の誕生日を知ったんだ。



そして、こっそりとプレゼントを用意してくれていたんだ。



こんなにたくさんのプリンをレジに持っていったら、きっと店の人は目を丸くしただろうな。


きっと恥ずかしかったよね。


それに、かさばるし重いし、持ってかえってくるのも大変だったはず。



でも、トラは、 私のためにやってくれたんだ。




笑えてくるくらいに、涙がとまらない。


こんなに泣いたのは、子どものとき以来かもしれない。