おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

ふらふらとリビングに入り、ソファにどすんと腰をおろした。



あおむいて天井を見つめる。


両手で顔をおおう。




―――早く忘れろ。


あんなやつ、忘れろ。



半年以上も一緒に住んでいたのに、実は婚約者がいましたって?


最低でしょ、そんなの。



しかも、こんなふうにいきなり、こんなにもあっさり、なんの未練もない顔で、きれいさっぱり姿を消すなんて。


薄情にも程がある。



会社もあっさり辞めるし。


どういうことよ。



最低。


冷たい。



こんなやつだと思わなかった。




「………トラの馬鹿。もう知らない。

あんたなんか、きれいさっぱり忘れてやる。

なかったことにしてやる」




だから、とっととこの部屋も出よう。



トラの存在したあとがたくさん残っているこんな部屋にいたら、いつまで経っても忘れられない。



トラと暮らした楽しかった日々を思い出して、トラの優しさを思い出して、つらくなるだけだ。



大丈夫、失恋なんて初めてじゃないんだから。


すぐに忘れられる。



つい半年まえだって、大失恋をしたんだから。


でも、もうすっかり立ち直ったわけだし。




そこまで考えて、立ち直れたのはトラのおかげだと思い当たってしまい、さらに落ち込む。