おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「おう、早かったな」



お風呂から上がると、トラがリビングのソファに座って新聞を読んでいた。



「ここ、座れよ」



トラが微笑んで、自分の足元を指で差す。



「最後だしな、髪、乾かしてやる」



え、と声が出そうになった。



そんなことしていいの?


婚約者がいるのに、他の女にそんなことしていいの?



でも、ずるい私は、なにも言わずにこくりと頷き、トラの言うとおりに腰を下ろす。



「うわ、びしょびしょ。ちゃんと拭いてから上がってこいよな」



トラは呆れたように笑って、タオルでくしゃくしゃと私の髪を拭いた。



それからドライヤーを取り出して、スイッチをいれる。



温かい風に私の髪が踊る。


トラの指がその髪をふわりと絡めとった。



私は言葉も出せず、すこしうつむいて、新聞記事を見るふりをする。



でも、意識はすべて髪に向かっていた。


そして、私の髪に触れるトラの指に。




トラの手つきは、すごく優しい。


間違っても引っ掛かったり引っ張ったりしてしまわないように、ていねいに、ゆっくりと、私の髪を乾かしてくれる。