おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

そんなふざけあいをしているうちに、あっという間にマンションの前に到着していた。


「うさー、早く開けてー」

「はいはい」


エントランスに入ってカードキーをタッチすると、大きなガラス扉がすうっと開いた。

ロビーを抜けて、瀟洒なデザインのエレベーターに乗りこむ。


最上階に到着して、一番奥にあるドア。


そこが私たちの住む部屋だ。


「ただいまー」

「やっと着いたなー」


リビングに入って荷物を下ろす。

私はトラが持って帰ってきたコンビニの袋を開けて、さっそくテーブルの上にお酒やおつまみを並べようとした。


「こーら、うさ。手洗いうがい!」


すかさずトラに諭されてしまう。

いつものことだ。

私は「はあい」と答えて洗面所に向かった。


トラはこういうことに関して、やけに口うるさいのだ。


手洗いうがいだけでなく、食事中のマナーとか、脱いだ靴の揃え方とか。


けっこうしつけに厳しい家で育ったのかな、と私は勝手に思っている。

まあ、トラの家のことなんて、私には全然関係ないけど。


トラがいつも言っている通り、私は指と指の間まで丁寧に洗って、トラに聞こえるようにがらがらと音を立ててうがいをする。


リビングに戻ると、テーブルの上にはすでに、きちんと皿に盛られたおつまみが並んでいた。