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それからの数日は、あっという間だった。
トラは家では引っ越しの荷造り、会社では仕事の引き継ぎに忙しくて、ほとんど会話らしい会話もすることのないままで。
そうして、気がついたら、引っ越しの前日になっていた。
「とうとう明日だね」
キッチンで夕食の後片付けをしながら、トラの背中に声をかける。
トラは振り向いて、にこりと笑った。
「ああ、明日だな」
「荷造りは終わったの? なにか手伝おうか?」
「とっくに終わったよ。この俺を誰だと心得る」
トラがふざけた口調で言うので、私もいつものように、「さすが営業部のエース」とふざけて返したけど。
声はやけに小さくなってしまうし、顔もひきつっているんじゃないかと思うと、気が気じゃなかった。
「続きやっとくから、風呂入って来いよ」
洗い物をしていると、トラが横に来て、私の持っていた皿をさっと奪った。
「え? いいよ、あとちょっとだし」
「いや、今晩で最後だしさ、やらせてくれよ」
何気なく言われたその言葉が、胸にぐさりと突き刺さった気がした。
最後。
今晩で最後。
こうやってトラと一緒に食事をして、一緒にテレビを見て、二人で並んで洗い物をしたりするのは、これで最後。



