おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

―――いやだ、と急激に思った。



「………ちょっと、ごめん」



私は吉岡さんに謝って、営業部に向かう。


各営業部員の行動予定が書かれているホワイトボードを確認して、もうすぐトラが外回りに出ることを知った。



私は急いで階段を駆けおり、一階の営業所の従業員通用口から外に出る。


通用口は駐車場に直結している。


社用車が停めてあるあたりに視線を投げると、いた。



「―――トラ!」



駐車場に私の声が反響する。


トラが驚いたように目を丸くして、乗りかけていた車のドアから顔を覗かせた。



「うさ………びっくりした」


「それはこっちのセリフなんですけど!」



勢いこんで言うと、トラは車のドアを閉めてこっちに歩いてきた。



「聞いたんだ? 会社辞めること」


「聞いたよ!」


「だよな」



トラが少し困ったように眉をさげて笑った。


私はじっとトラを睨みあげる。



「………なんで、ゆうべ言ってくれなかったの?」



それが私の一番気になることだった。


同居の解消の話をしたときに、言ってくれればよかったのに。



トラは「ごめん」と小さく呟く。