おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

もしかしたらトラはこのまま私と暮らしてくれるのかもしれないって。


五十鈴さんとの結婚はやめて、私と一緒にいてくれるのかもしれないって。



「………ふっ」



自嘲的な笑いが唇から漏れた。



………馬鹿だ。


私は馬鹿だ。



トラが私と一緒にいてくれる?


トラが五十鈴さんじゃなくて私を選ぶ?


そんなわけないのに。


私とトラはただの同僚なんだから。




―――諦めよう。


トラのことは、すっぱり諦める。


諦めて、ただの友達に戻る。



トラのことを好きだなんて思ってしまったことは、忘れる。


ただの勘違いだ。



突然あらわれた婚約者に驚いて、自分の気持ちを読み違えてしまっただけだ。




必死に言い聞かせながら、私は結局、その夜は一睡もできなかった。