今だけでもいいから、トラを独り占めしていたい。


そんな私の自分勝手で我が儘な気持ちにお怒りになったのか、神様は私に罰を与えることにしたらしい。



「俺、引っ越すことにしたから。

だから、ルームシェアは解消な」



帰宅してから突然、私を呼んで言ったトラの唐突な言葉に、「は?」と訊き返すことさえできなかった。


私はぽかんとしたままトラを見つめる。



トラはいつものように平然とした表情で続けた。



「急な話で申し訳ないんだけど、そういうことだから。

俺は今週中には出ていくよ」



「………え? ちょ、ちょっと待って」



「あ、うさはそんなに急がなくていいよ。

別にこの部屋すぐ引き払うってわけじゃないから。ゆっくり家探ししろよ。

なんだったらここに住み続けてもいいし」



「………」



驚きのあまり何も返せない私を、トラは微笑みながら見つめる。



「短い間だったけど、ありがとな。楽しかったよ」



私は呆然としたまま、とりあえず、

「………こちらこそ、お世話になりました」

と呟いた。



「じゃあ、俺、色々荷造りとかしなきゃいけないから」



トラはあっさりとそう言って、さっと背中を向け、自分の部屋に引き上げてしまった。