おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

「あ、野菜ジュースくらい買っとくか」


トラがふと思いついたように紙パックの野菜ジュースをカゴに投げ入れた。


「こんなん飲んだくらいじゃ、栄養バランスなんてたいして良くならないんだろうけどね」

「でも、飲まないよりはましだろ」

「まあねえ。気休めでもね」

「そうそう。大事だよ、気休めってのも」


トラがにいっと笑った。


レジで精算をすませて外に出る。

酔いの覚めない肌に夜風が心地よかった。


「さあ、帰ろう帰ろう」


上機嫌で言って歩き出すと、トラがさっと手を伸ばしてくる。

そして、流れるような動作で、私の持っているレジ袋を奪い取った。


「いいよ、一個くらい持てるし」


奪い返そうとすると、トラが私の届かないところまでさっと袋を持ち上げた。


「お前に持たせたらビールが爆発しそうだからな」

「ええ?」

「だってうさ、酔っ払うとすぐ持ち物ふりまわすだろ」


トラがまた私の鼻をつまむ。

私は仕返しとばかりにトラの脇腹を軽くつねった。


「いてて。あ、ところで、うさ。お前、鍵もってる?」

「え? うん」

「俺、朝たぶん部屋に忘れてきたっぽくてさ」

「あはは、ばーかばーか」

「言ったな!」


トラは怒った顔をして私の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。