おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―

10ページのコピー50部……500枚。

ホチキス留めまで?

しかも1時までって……今、11時半だから………うそ、絶対無理でしょ。

お昼食べに行く時間、なくなっちゃうって。


なんて横暴な………とため息が出そうになるのを、必死で飲み込む。


別に暇じゃないんだけど。

仕事は山積みだし。

でも、確かにぼうっとしてしまっていたのは自覚しているので、何も言い返せない。

たぶん課長なりの嫌味なんだろうな。


「………やるしかないかあ」


ランチは諦めて、後でコンビニでサンドイッチでも買ってきて、食べながらやるしかない。


もう、踏んだり蹴ったりだ。



12時になって皆が昼休憩に出ても、私は事務所に残ってコピー機にかじりついていた。

節電のために昼の一時間は照明が消されるので、とたんに薄暗くなる。


ウィーン、ウィーンとコピー機がうなる音。

吐き出された紙をトントンと揃え、カチャリとホチキスで留める音。


無機質な音だけが響くひと気のないオフィスに一人でいると、だんだん気が滅入ってきた。


「………」


頭を使う作業ではないので、そのぶん思考は仕事から離れて、ふわふわと飛んでいく。


またトラのことを考えてしまっているのに気がついて、自分に呆れると同時に、なんだかむかついてきた。