おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―








蛇の生殺し、ってこういう状態のことをいうんだろうか。


とにかく宙ぶらりんで、トラの考えが全く読めなくて、私は身動きがとれない。


このまま一緒に暮らしていいわけがないとは思うけど、自分から離れる気にはなれなくて。

トラが何も言ってこないのをいいことに、私は今まで通りの自分を演じながら、ただひたすら、じりじりと待ち続けている。


でも、まさか、『待つ』のがこんなにつらいことだなんて、思ってもいなかった。



「―――みさん……宇佐美さん! 聞いてる?」


突然いぶかしげな声が聞こえて、私ははっと我に返った。


顔をあげて、課長と目が合ったとたん、ここが会社で、今は仕事中だということを思い出した。


「………あっ、すみません! ぼーっとしてました!」


慌てて立ち上がると、勢いでデスクの上の書類の束を落としてしまった。


課長が「あーあー」と呆れたように眉根を寄せる。


「ちょっと、しっかりしてよ宇佐美さん。忙しい時期なのにさあ……それとも仕事なくて暇なの? それならこれもやっといてよ、よろしく」


課長はそう言って、私のデスクの上に10枚組みの書類を置いた。


「50部コピーして、ホチキス留めしといて。1時までにね」


私はしばらく考えて、えっと声をあげたけど、課長はすでに身を翻していた。