生神さまっ!

「似合ってるは余計だから!」




その場の空気を変えようとしてくれたのであろう春乃に私も乗っかる。



ほぅっと小さく息を吐き、肩を下げたのが見て取れた。




「そういえば言い忘れてた。

おめでとう…似合ってるって言っちゃあダメなんだ?」



「ダメ!」



さっきまでの張り詰めた表情からは考えられないような優しい表情を浮かべる冬斗に、ちょっと安心する。



2人の話はなんかよくわからないけど…やっぱり、さっきまでの空気はなんか嫌だ。




「それと…ごめん、秋奈」



「…えと、なにが?」



「なにがって…

…止められなかったことだよ…もっと訓練とか、安全な時に天界での初めての術を使うべきだった」




別に、そんなの全然大丈夫なのに!



…私自身、そんなに覚えてないしね。




「ただ…卑弥呼の"伝言"に引っかかって、待ってって叫んだんだけど…

止まる様子もない背中を見たら、なぜか本能的な感じで手が前に出て。


体の奥の方にこみ上げた熱い何かを押し出すように手をもっと前に出したと思ったら…

視界が赤に染まって……」




ううん、なんかその時のことを思い出そうとすると頭が痛くなる。




「…その時、秋奈の手からは綺麗な楓の形をした赤い光が出ていたんだよ」



「赤い光?」



「そう。その光は本物の楓以上に鋭利で、それを向けることで攻撃できるんだ」




そういえば夏樹も言ってたな、そんなこと。



…確かによく考えれば、手から本物の楓が出てくるって…ちょっと、ねえ。




「卑弥呼は、その楓のせいで彼女が作った壁が割れた音で気づいたんだよ。

そして…急に手で印みたいなのを結んで…光の楓が崩れ、卑弥呼が作り出した光が秋奈に当たったんだよ」




「お、隠さなくてもいいと思うけどな俺はー!

当たる直前に壁を作って、できるだけ秋奈にダメージがいかないようにしてたんじゃなかったか、誰かさんがー?」