生神さまっ!

なんだっけー、とへらへらしながら悩ませてる夏樹に私はふふんと笑う。




「卑弥呼もって死す…

そう書かれた魏志倭人伝によると、


卑弥呼は"他殺"の可能性が大きいんだって!」




「へー!秋奈すごいな!」




…全部中学の時の歴史教師の受け売りだけど、



そこは黙っておく。




「じゃあ…卑弥呼が人神になったのは

…誰かに殺されて、その人を恨んでいるからかもしれないってことー?」




「秋奈の言葉が本当だったら、そうなるよな…」




卑弥呼が人神になったワケ。



それに、一歩でも近付けたかもしれない…




「…卑弥呼が今いる場所は、スサノオが与えた1つの辺境値。


…"佐保邸(さほてい)"」




「佐保邸?

それって、まるで佐保って人の家みたいだねー」




ほら、大きな家とかだと、『○○邸』ってよく言われるじゃん。



…って、あれ?



なんでみんな…そんなにシーンとしてるの?



…なんか私、マズイこと言った…?




「…秋奈、あのね…


秋奈の言う通りなんだー…」




春乃が、ひきつった笑みを浮かべ、小さな声で言う。




「…佐保姫(さほひめ)。

春の神様で…あたしの生みの親のような人。


佐保姫様の持っているお屋敷は3つあるんだけど…その中で1番大きい屋敷がね…」




…私、バカだ。



もっと勉強しておけばよかった…



春の神様が、佐保姫って人だということぐらい。



春乃はきっと、佐保姫をとっても大切に思っているんだ…だからこそ、大切な人の家を取られて、悲しいんだ…




「…あたしに悲しむ資格、ないのかもしれないけどねー…」




はは、と寂しそうに笑う春乃。