そして黒姫様はそれを確認すると、水晶玉を天に掲げ、頭を下げた。


「冬の神、黒姫。

天にこの魂を捧げましょう」


水晶玉はそれを合図に、一度ぴかっと白く光ると、気づけばその光は消えていた。

冬夜が…捧げられた、ということだろうか。


「…契約は完了した。

冬とも…すぐに目を覚ますだろう」



冬夜…ではなく、横たわる冬斗の呼吸を確認し、元彰がうなずいた。


「戻るか…天界に」


黒姫様の言葉に、私たちもうなずく。
夏樹がよっこらせ、と冬斗をおんぶした。


黒姫様がなにかつぶやくと、私たちは紫色の光に包まれる。

目を閉じる刹那…ふと、冬夜の顔が浮かんだ。
冬斗と同じ、でも確かに違かった。


「…さよなら、冬夜」


冬夜はもしかしたら寂しかったかもしれない。

冬斗を惜しみ泣いた私たちを見て、冬夜はどう思ったのだろう。


…大丈夫。

冬夜なら…きっと来世には、幸せに生きているはずだから。

冬夜…

ほんとうに、ありがとう。