「お前の策略に乗ろう、黒姫。
お前は知っていたんだろう。冬斗がただじゃ譲らないこと。
だから、こうして僕を呼び寄せて、仕方なく、という体にするつもりだったんだろう。

…僕を捧げろ。もう僕は、冬斗に守られて十分強くなった。

あとはもう、楽になりたい」


そして冬夜は、私たちを見回す。


「悪かったな。お前たちが大好きな冬斗を、一瞬でも消した形になってよ。

でも、安心しろ。もう、大丈夫。
僕が消える。あいつは、二度と消えない。

あいつはこれから”冬夜の別人格”じゃなくて、”冬斗”として生きていく」


「…冬夜は、ほんとにそれでいいの…?」

「なに、秋奈は僕のことまで心配してくれるの?優しいなあ。
いいに決まってるでしょ。
僕も悪いと思ってるんだ。

…ありがとう、冬斗。今までずっと、俺の代わりに頑張ってくれて」

冬夜は、水晶玉を見つめながら優しく微笑んだ。
黒姫様はそれを見届けると、「いいか」とつぶやいた。


「未練はもうない。始めてよ」

「…感謝するよ、冬夜。

私のエゴに…付き合わせて、本当にすまなかった」

「…気にするなよ。あいつも喜んでるよ。

僕らにとっての親は、ひどいものだった。
今のあいつにとっての親は、お前なんだろ。冬斗は、誇りに思っている。

僕にはわかっちゃうんだよね、同じ体だ」

黒姫様はそっと微笑み、うなずいた。

そして、何かをまたつぶやき始める。


「…短い間だったけど、一瞬でも表に出れて楽しかった。

…じゃあな、みんな」


「…ばいばい…冬夜」
「ばいばい…」
「じゃあな、」


冬夜は最後に少し笑った。

「来世は…幸せになるわ」

その言葉を最後に、冬夜はふっと意識を失ったのがわかった。

そして代わりに水晶玉から青い光が、その体に入っていく。
白い光が体から出て、水晶玉に吸い寄せられるように入った。