気づけば壁は消え、黒姫様だけが立っていた。
黒姫様は倒れこんだ冬斗をそっときれいに床に寝かせた。
「…冬夜は、出てこない、か」
黒姫様のつぶやきは私たちの耳まで届いた。
冬夜が…出てこない?
「…なん、で…?」
「表に出る恐怖感は消えた。
けど冬夜はもう、表に出ることさえ、自分の存在さえ忘れて冬斗のなかで生きていたのかもしれないな」
黒姫様は、青い光が入った灰色の水晶玉をそっとなでる。
「…悪いことをしたな、冬斗。私がいけないのだ。
私が…」
「…黒姫様。
冬夜が出てこなかったら…どうなるの?」
震える声で、春乃が尋ねる。
黒姫様は、自嘲的な笑みを浮かべた。
「契約は完了した。冬の生神はうまれた。
本体がいなくても、その事実が生まれただけで十分だろう。
こいつの形見でも持っておけ。冬の力など、それで十分なはずさ」
「…おい、それじゃあ…冬斗はなんのために、自分を捧げたんだよ…
冬夜とかいうやつが出てこなきゃ、あいつが…あいつが消えた意味ってなんだよ、冬夜とかいうやつを捧げてもよかったんじゃねえのかよ!!!」
「…冬斗は、自分が冬夜から生まれた存在であることをずっと気にしていた。それだけはどんなことがあろうと譲らなかった。
…何のため、か。簡単だよ。
あいつは、周りのために自分を犠牲にした。ただそれだけだよ」
周りのため、に。
私たちが…スサノオに勝つために。冬を取り戻すために。
冬斗は…
「…んで…」
「…秋奈さま?」
黒姫様は倒れこんだ冬斗をそっときれいに床に寝かせた。
「…冬夜は、出てこない、か」
黒姫様のつぶやきは私たちの耳まで届いた。
冬夜が…出てこない?
「…なん、で…?」
「表に出る恐怖感は消えた。
けど冬夜はもう、表に出ることさえ、自分の存在さえ忘れて冬斗のなかで生きていたのかもしれないな」
黒姫様は、青い光が入った灰色の水晶玉をそっとなでる。
「…悪いことをしたな、冬斗。私がいけないのだ。
私が…」
「…黒姫様。
冬夜が出てこなかったら…どうなるの?」
震える声で、春乃が尋ねる。
黒姫様は、自嘲的な笑みを浮かべた。
「契約は完了した。冬の生神はうまれた。
本体がいなくても、その事実が生まれただけで十分だろう。
こいつの形見でも持っておけ。冬の力など、それで十分なはずさ」
「…おい、それじゃあ…冬斗はなんのために、自分を捧げたんだよ…
冬夜とかいうやつが出てこなきゃ、あいつが…あいつが消えた意味ってなんだよ、冬夜とかいうやつを捧げてもよかったんじゃねえのかよ!!!」
「…冬斗は、自分が冬夜から生まれた存在であることをずっと気にしていた。それだけはどんなことがあろうと譲らなかった。
…何のため、か。簡単だよ。
あいつは、周りのために自分を犠牲にした。ただそれだけだよ」
周りのため、に。
私たちが…スサノオに勝つために。冬を取り戻すために。
冬斗は…
「…んで…」
「…秋奈さま?」

