冬斗はしっかりとうなずいた。






「…分かった。

お前は今から、"冬の生き神"となる…と言いたいところだが。
正しくは、”半神”…神の、なりそこないだ」






彼女の手から白い白い光が生まれ、冬斗を包んだ。

冬斗はそしてやっと、私にその目を向けた。




「…秋奈が、俺を助けてくれたんだ。

だからいつか俺が、秋奈を守るよ」




「ふゆ…と…」






「…安心しろ、お前の記憶は私がいただく。お前はまだ知るべきではない。

あいつは良く言えば自由人、悪く言えば何にも大した興味がないだけ。
お前が救われるのは、まだ先さ」




長い黒髪を風になびかせたその人は、静かにつぶやく。




「冬神、黒姫(クロヒメ)。

ただ今天に、生き神を献上します」






私は既に、意識を手放そうとしていた。

最後に見えたのは、眠る冬斗を横抱きにした美しい横顔だった。