生神さまっ!

今の、たった一瞬。


何が起こった?何が??

肩で息をする、辺りに白い息が浮かぶ。



ふと下にいるその人を見下ろすと、彼は全く動いてなかった。

さっきまで私に向けられていたはずの狂った目も、見えない。


暗闇の中顔は見えずただ身体が横たわっているのが見えた。




死んで、いるのだろうか。

なぜか冷静にそんなことを考えていた。足元にまで赤黒い液体が届く。

そこから足を外し、歩く。



「ふゆ、と…ふゆと、冬斗…

どこにいるの、ふゆと…」


誰もいない。私以外、誰も、いない。

消えた。闇の中に消えた。
いたはずなのに。



さっきまで横に、いたはずなのに。



「しな、ないで…死なないで、死なないでふゆと、とうや、どこに、どこにいるの」


唇がカサつく。呼吸が荒くなる。生暖かい液体が頬を通る。

頭がぐるぐるしてる。視界も。

オーナーさんごめんなさい、今はあなたを助けるどころじゃないの。

消耗しきった体力を動かして、手すりの方まで歩く。

下を覗くけど、何も見えない。暗い。