人間界と変わらない、普通の住宅街みたいなところの路地裏でしゃがみ込む。



動きやすいように加工してある着物だとはいえ、そりゃ普通の服よりは動きにくいからやっぱり大変だし。

でもこれ以外に用意できないし。



まさか走り回りたいので洋服ください、とか言えないし?




「……やばい、足。
そりゃあ1時間ぐらいほぼ走りっぱなしだもん…

いくら体力が上がったからって…」




息を整えながら、見上げる。

闇色の空には、三日月とも半月とも言えない中途半端な月が見えた。



その月は綺麗に輝いている。




「…なんで、なんだろう」




月に向かって、つぶやいた。
答えなんてかえってこないこと、知っておいて。




「…なんで私だけ…」





月を見ながら。
そう、月を見ているだけであって。


決して、上を向いていたいからじゃないんだ。