生神さまっ!

「…だからと言ってどさくさに紛れて抱きつこうとしてるのやめよ?」



「あー、ごめんごめん。体が勝手に」



自分の肩にまわっていた夏樹の手を笑顔で戻している時「秋奈」と声がかかる。




「…あ、冬斗…」



「……良かった、戻って」




相変わらずの優しさを持つ爽やかな笑顔を浮かべて隣に来たのは、冬斗本人。



…さっきまでの虚無な目を感じさせない綺麗な黒の目は、私の記憶を惑わせる。




「冬斗もごめん…本当、みんなに迷惑かけちゃって」



「しょうがない。道真の力に抗える人なんて、数える程しかいないからさ」




……忘れよう。

冬斗のあの時の顔は、忘れよう。


残忍な、私の知らない"冬斗"の顔。


脳裏に浮かぶ…けどすぐに振り払う。




「お前を殺せという命令は姉さんから受けていない。

そもそも…秋が終わればお前の力は薄らぐだろうし、残念ながら白の玉もこちらにある。


白の玉でこの女を釣ったみたいだけど、裏目にでたね」




「ふふ…生かしてもらえただけ感謝しましょうか。


…わたくしはまだ生きろ、と言われているのですねえ。

ならば黄泉の国に行くのは勿体無いというもの…もう少し我が戦友であり、主であり、かれこれ長い付き合いになるあなたさまの弟君に貢献しようと思いますねえ」