「あたし達が季節を生み出せるのは、ほんのひと時だけ」



いつの間にか立ち上がっている春乃に目を向ける。



寂しそうな顔で、自分の両手を見ていた。




「……秋奈。聞いてくれ」



冬斗の真剣そうな声に、私は黙り込む。




「スサノオ含む、スサノオ一派が影で色々動いているという情報が1年くらい前から数件届いてる。

そしてそれは、1ヶ月くらい前から全く届かなくなった。

つまり、準備は整ったということ」



「スサノオは、今にも動きだしそうだってこと。

ま、何気に策略家のスサノオは…準備が整ってもしばらくは手を出さないだろうけどねー」





「夏樹の言う通り。


けど、手を出すのはもしかしたら明日かもしれない。



俺達4人や季節の神4人が襲われ、力を奪われる前に…




封印された4つの玉を、取り戻して、封印を解かなければ…






天界はおろか、人界の季節にまで影響が及ぶことになる」





人界…



私がずっといた…あの世界の、季節が…?




…嫌だ。




脳裏に浮かぶ、四季それぞれの思い出。



友達と笑い合ってどこかに行く時も、



楽しい学校の行事も、





お母さんとお父さんと一緒に遊ぶ時も。





いつも季節に彩られていた。





「影響が及ぶ季節は、春夏秋冬の順番!


…まず、今のところ1番危ないのは…春だね」





相変わらず明るい夏樹が、春乃の方を見ながら言った。



春乃は夏樹に対して、深くうなずく。



そして、私の方へ顔を向ける。





「秋奈。


あたしと一緒に…


四季を…救おう?」





差し出された右手は、少し震えてる。



…なんで震えてるのかは、分からないけど。




「アマテラス様の時にも言ったでしょ?春乃」




ぱっと、うつむいてた顔を上げた春乃の顔は、どんどん笑顔になってゆく。