私は…彼の部下なのだ。



再度彼女へと走り出す。
彼女は…悲痛そうな目でこちらを見る。



…そんな目で、見ないでよ。

赤髪の彼が庇うように前に立とうとしたけど、彼をどん!と押し返した彼女。




「春乃……!!」




私の体は止まらない。



「秋奈…お願い……!!」



振り上げた右手。もう、彼女は逃げられない。





「………月が綺麗だ」





………え?

異変を感じたのに…少し時間がかかる。



私の右手が…ふり下ろせない。

目を閉じていた彼女が、私を見上げる。





右手を見ると…

…その腕には、手。




「姉さんのためであって。君たちのためではないことを最初に言っておこうと思う」



腕に絡みついた手は…刃の撃を受けていない…!?

血一滴流れていないその真っ白な手の主を見ようと、後ろを振り返る。




「…僕はうるさいのがそんなに好きでないんだ。

さっさと終わりにすれば良いものを」





ハッとするような美しさを持つ、光り輝く銀色の髪。

誰の目も外せない美しい金色の目。

真っ白な肌。華奢な体つき。


それと正反対の…漆黒という言葉が似合う、闇色の着物。





「……あな、たは…」