確かに、この風はおかしな感じ。


春って、確かに暖かいけど…4月のこの時期には、まだこんな暖かくない風が吹く。


秋はもっと涼しい感じの風だし。



「今日は…4月2日でしょ?

実はね、あたしの誕生日なんだあ」



へへっと照れ臭そうにほおをかきながら、彼女は窓の外をずっと見続けている。



「…桜も、梅も咲いてくれないんだけどねえ…」



失われた"四季"…


それを悲しむ人は、たくさんいるんだ。



私も実際、季節は大好き。



暑いのも寒いのも、毎年なんだかんだ我慢できてるし、楽しめた。



それが…なくなっちゃったんだよね。全部。



春でもないし、夏でもないし、

秋でもないし、冬でもない。



なんとも言い表せない、けど住みやすい気候がこの世界を覆った。



けど…いくら住みやすくても、


みんなが手放しに喜ぶはず、ないんだ。




「ねえ春乃…なんで四季は消えちゃったの?」



「ある神様がやってしまったの」




春乃は私の方を振り返って、悲しそうに笑う。




「須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)…

スサノオ」