生神さまっ!

お父さんは一度振り向くと、お手伝いさんに目配せした。



出てけ、と言ってる。

そんなの分かってる。



お手伝いさんは出ていくことを躊躇した…けど、父の眼光にやられてか、一度小さく頭を下げると、部屋から出て行った。



その際私に悲しそうな目を向けてきた…それはきっと、彼女なりの優しさの表れかもしれない。




「…今日もね。

兄さんが失敗してね、損害が出た。
なんとかたてなおしたものの、兄さんは素知らぬ顔…

功績は僕に来るけど、名声は兄さんに集まる。


ああ、秋奈。この世界は不条理だと思わないか?」




「…そうだね、お父さん」



お父さんの口癖。

"世界は不条理だ"




「分かっていないだろう、秋奈。分かっているふりをするな。

秋奈、お前にこの苛立ちが分かるはずなどないだろう。


なんで1年早くうまれてきただけで兄さんに全て奪われなきゃいけないんだ。
兄弟がいない秋奈には分かるはずなどない」




「…そうだね…ごめん」



「………さっきから、俺を苛立たせたいのか?秋奈」




……なんで、そうなるの。


私は苛立たせようとなんて、してないでしょ、どう聞いても。



けど、お父さんにはきっと…そう聞こえてしまうんだ。

私が何を言っても。




「………ああ、いらつく」




その刹那、



私の頬に、鈍い痛みが走った。