私は後ろから温もりを感じたまま、腰を抱かれ、そのまま上に引っ張られる。

よろよろとよろめきながら立ち上がると「行こうか」という声が耳元で聞こえた。




ふわっと、足が地上からそのまま離れる。




「こっちの方が、いい」



「え、ちょっと…!!」



冬浮感から逃れようと、足をばたつかせるけど…全くダメ。


俗に言う"お姫様抱っこ"を私は、

冬斗にされている。



「元彰はこっち見ないでね。

傷を癒すのは、
俺の役目なの」



「…分かっていますよ、そんなこと」



「じゃあね」




お姫様抱っこをしたまま…冬斗は、部屋から出て…冬斗の部屋へと向かっているようだった。


その間は、一瞬で。



ほんの数十秒でついた冬斗の部屋。

あいていた襖の中に敷かれた布団に私を優しく下ろした冬斗は、一旦立ち上がって襖をしまった。



そして、私の方へ向かって…しゃがんで。




「……俺の役目だから。

いいよ、そんな静かに泣かなくて」




私を……ぎゅっと、抱きしめた。