涙腺が、緩もうとする。




泣くのは、いつぶりか。






「…………罪は時として、加害者自身に深い傷を作ります。

秋奈様の傷は深く、冷たく、表向きは治っています。
ただ、治っていないのが真実です。



アマテラス様と同じようなことを言いますが。

あなたの傷は、この世界で癒すことができるでしょう」




「わたし、の…傷……」




「……癒して差し上げますよ。

あなたの冷たい心も、完璧に溶かしてさしあげます」



目が、熱い。

ああ、もう、耐えられない。




「ただ」




ごめんなさい、
お母さん、お父さん。


もう、無理。





「………あなたの傷を癒すのは、
僕の役目ではありません」





堪えきれなくなった目元に……ふっと、温かみを感じる。

そして同時に、真っ暗になった。



目元に感じるのは、人の温もり。


背後に感じるのは…人の気配。





「……元彰、覚えておいてね」



「…秋奈様の涙は残念ながら拭うことができませんでしたよ、

冬斗様」




「俺が来なかったら元彰は秋奈に手を出していたかもね。

間に合って、良かったよ」




「………それではいってらっしゃい、


変態エセ王子様」




「……主人への態度を、1度改めさせないといけないかもね。


じゃあ行こう、



秋奈」