「僕の名前、分かりますか」




分かってる。
分かってる、のだけれど。




口を開く。
けど…

…声が、出ない。



口内には唾が溜まるだけで、それを飲み込む。
口からは小さい息しか出てこない。




喉元を右手で抑える。
前を見ると、まっすぐに私を見る彼と目があった。




「やはり僕の予想は大方当たっていたのでしょう。

秋奈様は、僕を秋奈様の知り合いと重ねている」



"彼"は微笑みを絶やさず、言葉を続ける。

ずっと私を見ながら。




「その"知り合い"が、秋奈様にとって大切な存在であったか…


それとも、


自分の"罪"を思い出させてしまう、
邪魔な存在であったのか。

その2択であると僕は思っています」




「……うん」