モヤモヤしたまんまお風呂に入った。


お風呂はいくつかあって、私専用のお風呂もある。




だから残念ながら、春乃と一緒に入る、とかはなかなかできない。


広いお風呂もあるけど、毎日沸かすわけじゃないし…





心はスッキリせずにお風呂からあがって、部屋でただぼーっとしてみる。

本を読もうにも読む気がしない。



けど、眠れない。

自分の考えが、分からなくなる。


自分がなんでこんな風に思ってるのか、分からない…




寝ようと思って、布団の上で目を閉じた。



その時。





「あの、すいません。

起きていますか」





……襖をコン、コン、とノックしたみたいな音と共にやって来た、声。





「…起きて、ます」



「そうですか…

…元彰です。僕の部屋に、来れませんか?」




…ああ、彼だ。



アイツに似てる、

彼、だ。





「……いいですよ」




「……良かったです。

この廊下の突き当たりを右に曲がって並んだ部屋の手前から3つ目の部屋です。


…周りにバレないように、来てください。では」





こんな夜に、同い年の男子の部屋に行く。

普通はあり得ないシチュエーション。

しかも今日が初対面。



けど…私は、引き寄せられるように。


彼の声が聞こえなくなってすぐに部屋を出て、

彼の部屋へと、歩いていった。






私も彼と同じように、襖をノックする。


「どうぞ」の声が聞こえたら。




まるで魔法にかかったみたいに。



自分の意思なんか通じずに、




私は、襖を横に開いた。







「……こんばんは、秋奈様」






部屋には、

座布団に座って笑う、



彼がいた。