こうなってしまったのも、全てお母さんとお父さんが事故で数週間前に死んでしまったせい。




正しくは…義母と、義父だけど。




2歳までは、孤児院暮らし。そこから10年以上、幸せに暮らしてきた。

…まあ、その時の記憶はないわけだけど。

これからも。そう思っていたはずなのに。




…また、孤児院になんてさ。







「…人生って、なにがあるか分からないわよね」





「え…?」





後ろから聞こえた、凛とした美しい声に、振り向く。



…綺麗な人。



160の私より…10cmばかり高い。



形の整った顔のパーツ、昔の人が着るような美しい着物はぼんやりと、薄明かりのように光る橙色。



腰の辺りまで伸びているこれまた綺麗な黒髪は…



前髪の3分の1ぐらい、白い髪だ。



珍しい髪…それに、この時代に着物なんて、変わった人。



…いや、この人、誰?






「驚かせてしまったわね。

…初めまして。この孤児院の管理人です」



…随分若い人だけど。


まだ20代半ばから後半ぐらいなのに…管理人?



そんなもんなのかな、孤児院って。



ふっと笑った彼女に、笑顔を作るけど…絶対引きつってる。




そんな私を見て、彼女はまた笑った。