「あの子は、たくみに車椅子を使いこなして、

障害者テニスを…夏樹が消えてから、すぐ始めたの」




「…テニス、を……?」




それって…

香織さんの夢である、テニス選手を…まだ諦めてないってことなんだよね?


なんだか、私まで嬉しくなってくる……!!




「…つい1年前に、10個程に都道府県で行われる大会があったのだけれど…


それで、優勝したの」




「優勝!?アイツが!?」



「まちがいないの。

今年は全国大会にチャレンジするの…この夏に」




「…すっげ…


…すげえや、本当…


アイツ……本当……俺と違って、すげぇ……」




夏樹はうずくまって…今にも消えそうな声で、言った。

何度も、何度も。


すごい、って。



でも…夏樹、1個だけ間違えてることあるよ!




「俺と違って、ってなに!?

…夏樹だって…


夏を、取り戻せたじゃん!!」




私の言葉に……夏樹が、ゆっくりと顔を上げた。

その顔は、まだ…昔の、10歳のまま時だけが過ぎたような、幼い子の顔のよう。


眉を少し寄せて、悲しそうな顔で私達をみている。




「夏樹は…あたしのためにも、夏を取り戻すてくれたんでしょー!?

それ、すっごく嬉しかった……!


桜だけじゃなくって、次の夏に今度花火でもしよー!」




「…俺はかき氷とかが食べたいなあ、夏樹?」




「…お前等……」