ぽつん、と夏樹がつぶやく。




「治しにいく、とかじゃないのー?」



「…あの傷じゃ、転移の術を使った時点でもう死ぬか死なないかの賭けだろうからね。

そこまでして、行きたい場所があったんだろうね、義経にも」




…死ぬと分かってまで、行きたい場所、か…




『もう1人…我には仲間がいる、信じられる』




「…源義経。父、源義朝は平清盛に戦争で負け、殺された。

成長する過程で、1人の男と会った。


その名も、武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)…

幼少時代義経と彼の話…弁慶が義経の刀を奪おうとしたが、義経は全て交わして、自分より何倍もでかい大の大人を倒してしまう。


そして弁慶は…あまりにも強かった義経に敬意を抱き、生涯2人は死ぬまで共にいることになる」




冬斗が…誰に言うまでもなく、そう言った。


私も、その話は少しだけど聞いたことがある。



確か…義経がお兄さんの兵に攻められてもう逃げられない、って時に…


『お先に行ってください』


そう言って義経の前に立ちはだかって…体に何本矢をつかれようとも、動かなかったとか。



本当なのか、分からない。

でも…



彼が、義経の仲間だったことには変わりないと思う。