生神さまっ!

無理矢理背中を押され、部屋の中に入る。


顔をあげた先には…口をぽかん、と開けてる香織。




そりゃ、勝手にドアが開いたら…驚くわ。



けど…彼女はそんな薄い反応しか示さなかった。
すぐに興味なさげに、視線を下に戻す。



あり得ないことが起こっているのに…そんな無表情のままで、いないでよ。




「…香織」



俺は、きっと聞こえてないと思いながらも、語りかける。



「ごめん、もう二度と会えない。俺はきっと、後で見つかったっていう知らせが来ると思うけど、実際見つからない」



言ってて、悲しくなってくる。

つまらない人生だったはずなのに。名残惜しいのか、まだ。




「…俺は、いつも香織に救われてた。


痛いのも苦しいのも我慢して無表情を貫き通した俺に、香織は笑顔を向けてくれた。

俺は、香織の前でだけ自然体でいられた。

俺は、香織がいたから…


…案外この世界を、好きでいられたんだ」



届かない。届かない、思いを。

ただ、口に出す。



「香織、やっと気付けたんだ。

自分が色々やって、やっと気付けた。
やってはいけないことをやって、やっと気付けた。遅すぎた。


あの夕焼けを見て、朱い向日葵を見て、やっと気付けた」



聞こえていないと知ってながらも、なぜか緊張した。

…言おう。



一度目を閉じて…開く。




「香織。

俺、お前のことが好きだったんだよ」