生神さまっ!

距離にして20mほど。




向日葵のせいであっちは俺の姿に気付いていない。





ただ…俺は、酷いくらいに冷静だった。

小4だとは思えない残忍な心の持ち主だと、人は言うだろうか。

あり得ない、と言うだろうか。



けど…あの時の俺は、確かに冷静だった。




筒姫の言ってる言葉なんて、実際半信半疑だった。

いくら彼女が不思議な力を持っていたとはいえ、やはり俺は神という存在を信じられてなかった。

けど、頼るしかなかったんだ。あの時の俺には。




きっと、今まで俺が見ていたものは全て…夏が見せた悪い夢なんだ。




昔から夏は嫌いだったんだ。


暑いし、蚊に刺されるし、冷たいものを食べると頭が痛くなるし。




けど、夏で、唯一俺が好きだと思えたのは。









陽炎(かげろう)が全てを、消してくれることだった。







「…じゃあな」






裕也の目が、大きく見開かれる。

唇が少し震え、俺に向かって少し手を伸ばす。


裕也の目に映る俺は、どんな姿だったのか。




ナイフを振り下げる刹那…なぜか、裕也の目に映る俺が見えたんだ。





その俺の姿に驚いている間にも俺は…







ナイフを、振り下げた。