生神さまっ!

結局香織は、元々題名を決めていたのだ。




…俺に意見を求めた理由は知らないけど、さっきの答えでよかったんならいいや。







「…ん?なに?」



あまりにもじっと見ていたのか、香織が視線を上げる。


…お前を見ていた、なんて言えるわけがなく。




「…題名の後、名前書けよ」



「ああ!忘れてた!ありがと!」




苦しい中見つけた彼女の間違いを指摘し、なんとか乗り越える。




そのあとは、俺が何も言わなくても香織はどんどん鉛筆を進め、あっという間に3枚の原稿用紙がキレイな字で埋め尽くされた。






…香織は、本気でテニス選手になりたいのだろう。





「そうだ!夏樹の夢はどーすんの!?」




「俺?

そうだな…


…香織がプロになって試合に出て、メダルをとるのを見ること、とか?」




「っ、あ、あほ!変なこと言わない!」




怒り口調だけど、明らかにニヤついている香織。

俺はそんな香織を見て、自然とほほ笑む。






…決して、嘘じゃない。

香織、俺は君が試合に出てメダルを取って、君が笑顔になっているところを本当に見たいんだよ。






これが、

俺と香織がちゃんと対面して話す最後の時であることも俺たちはもちろん知らず、




ただ、

こんな日常が続いていくのだとしか思っていなかった。