「…言わないで」



冬斗に背中を向けていた私。
後ろから、冬斗の大きな手が私の口をすっぽり包む。



「ん、んんー!!」




上手く息もできないんですけどー!!




「…夏樹にされてた時、今みたいな声出してたでしょ?」




…そういえば、私なりに…キスしながら、叫んだって言うかなんていうか。




「様子がおかしいと思って夏樹の部屋に入ろうとした時、さ。

最初はどっかの女の子と楽しんでいるだけだな、って思って退こうと思ってたんだけど…
…嫌がってるみたいだったから、覗いてみたんだよ。

そしたら、秋奈が…半分脱いでる状態でそこにいるんだ。


…俺としては、そう思うに決まってるでしょ?」




…なんか、妖しい、っていうのか。
冬斗の声が、いつもの優しそうな声じゃなくって…色気がある、っていうか。
私と同い年とは思えない色っぽさがある声が耳元でして、なぜか体が少し震える。



「……ごめん、無理矢理するつもりじゃなかったんだけど」



いつもの冬斗の声に戻ったと思ったら、口が解放される。



「ぷはっ…!

……っ、さ、さよなら!!」




もう、冬斗になんか目もくれず。
私は一目散に冬斗の部屋から出る。

なんか私を呼んだ声が聞こえた気がしなくもないけど、オール無視!ちょっともう、顔向けできませんから!!



急いで隣の部屋に逃げ込んで…引いたままだった布団にぼふっ!とダイブ。




…なんだったんだ今日は!


夏樹も冬斗も…なんか様子が、変だった!明らかに!



…待って。



私の部屋、って…右左冬斗と夏樹じゃん!!
う、わ、どうしよう!夕飯とかもどうしよう!!

…そうだ、遅れて行こう。春乃に後で、突然逃げてごめん!って言って謝って…先に夕飯行ってて!って言おう。




…そうだ。
夏樹が私に急にキスしたのが悪いんじゃないんだ。

…私が、突然春乃から逃げたのがいけないんだ。



だって、見られたと思ったから。



…私の着物がはだけて、白のキャミが見えてしまった時。
キャミも少しめくれて、私のお腹が…多分、春乃には見えてた。



…ただ私は、
誰にもバレたくなかった。



春乃にも。


誰にも。



これを知っているのは、

アマテラス様だけでいい。